ヴァンティジ・ポイント 目次
目撃情報のモンタージュ
原題について
見どころ
大統領狙撃事件
警護官トーマス・バーンズ
刑事エンリーケ
旅行者ハウワード・ルイス
  ハウワード・ルイス 続き
アメリカ大統領アシュトン
「テロリスト」ハビエル
スアレスとヴェロニカ
8人目の目撃者
組み上がった光景
激  突
物語(筋読み)の勘違い

おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
諜報機関の物語
ボーン・アイデンティティ
コンドル
ブ ロ グ
知のさまよいびと
信州の旅と街あるき

激  突

  トーマスが乗った乗用車は、トラックと店舗建物とのあいだに挟まれて押しつぶされてしまった。だが、トーマスは無事だった。彼は、破れて亀裂だらけになったフロントガラスを押し破って、車の外に逃れ出た。
  しかし、そのあいだにケントとハビエルが乗ったパトカーは遥か向こうに走り去っていた。それでも、トーマスは走ってパトカーを追いかけた。
  トーマスを振り切ったパトカーは、高架道路下の引き込み線に走り込んだ。そこに、サラマンカ警察のエンリーケが現れて、ケントに合図した。それを見たハビエルは、エンリーケがスアレスの仲間だと勘違いした。エンリーケは、ヴェロニカに騙されて利用されただけだったのだ。

  ハビエルは、エンリーケに近づき「弟の居場所を教えろ! 弟を解放しろ!」と迫った。
  だが、エンリーケが知るよしもない。エンリーケは「弟なんか知らない」と答えた。
  すると、ハビエルは銃を抜いてエンリーケを撃った。倒れたエンリーケに駆け寄り、追求したが、エンリーケは「知らない」と言って意識を失った。
  そこにようやく銃を構えたトーマスが追いついた。ケントはパトカーのアクセルを踏んで逃げ去ろうとした。ハビエルは、パトカーのドアピラーにつかまって、いっしょに逃げようとした。そのハビエルをトーマスは続けざまに銃弾を浴びせて射殺した。続いて、走り去るパトカーのリアガラスに銃弾を撃ち続けた。
  破れたリアウィンドウから飛び込んだ銃弾がケントの身体を傷つけた。その衝撃でハンドルを切り損ねたケントの車は、高架道路のコンクリート支柱=側壁に激突した。側壁は、車を押しつぶし、ケントの頭部も押しつぶした。

  一方、拉致された大統領を乗せた偽装救急車は、その場所に近づいていた。そして、猛スピードを保ったまま、高架道路の下の道路の緩やかなカーヴを曲がろうとしていた。
  ところがその道路の中央には、母親とはぐれた少女、アンナが立ち竦んでいた。
  アンナは、道路の反対側に母親がいるのを見つけて、歩道から走り出してしまったのだが、高速で走り込んでくる車に怯んで立ちつくしていたのだ。
  立ち竦んでいる少女の直前まで救急車が近づいた。スアレスは、突然目の前に現れた少女を発見した。とっさに避けようとして思わずハンドルを切ってしまった。だが、速度が大きすぎたために、救急車は大きく傾き、そのまま横転してしまった。

  倒れたまま、救急車はアンナに迫ってきた。それを見ていたハウワード・ルイスが必死に走り込んで、間一髪でアンナを抱きかかえて救出した。
  そのまま道路脇の側壁や支柱にぶつかり、横滑りして、ようやく停止した。
  救急車に近寄ったトーマスは、乗員や患者を救出しようとして、車の後部のドアを開けた。すると、なかには大統領がいた。かなりの打撲衝撃を受けてはいたが、命に別条はないようだった。
  トーマスは大統領を助け出そうとした。そのとき、重傷を負っているスアレスが意識を取り戻し、銃を構えようとした。だが、一瞬早く気づいたトーマスがスアレスに銃弾を浴びせて射殺した。

  事故現場にアメリカの警護班やサラマンカ警察、消防隊が急行してきた。特別の救急ヘリコプターもやって来た。こうして、大統領は保護され、安全を確保された。
  この場面で物語は終わる。茫然、憮然とした場面で唐突に映像物語は終わる。
  テロ事件の背後関係について語る場面はない。だが、この事件はいったいどういう構図なのだろう? 謎は残されたままだ。

物語(筋読み)の勘違い

  私は、この物語の終局場面について、とんでもない思い違いをしていた。
  どういう勘違いかというと、
  スアレスたちテロリスト一味は、アラブの「聖戦戦線」の実行部隊ではなく、アメリカ政権と軍部の強硬派によって雇われたグループで、モロッコ辺境地方への先制ミサイル攻撃を――これを渋る大統領を拉致している間に――仕かけるための道具として利用されているというプロットだと思い込んでいた。
  別の作品のプロットと混濁したらしい。
  というのも、映画の物語に責任を押し付けるようで、恐縮だが、物語の終わりがすごく単純で平板すぎたので、そんな「ひねり」のない物語ではないだろう、と勝手に想像したからだ。

  しかし……私の勝手な想像だが、映画の制作陣は私が想定したような物語に仕立てたかったけれども、アメリカ政治の力関係がハリウッドへの暗黙の圧力となり、そういう結末にできなかったのではないかと思っている。

前のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界